『ここにずっといるのも飽きてきたわ。
いろいろな景色を見たいの。』
宇宙船がのたまう。
陶器の置き物が場所に飽きただと???
ふざけるな!ワタシはあなたの飾り場所
を確保するために、1日費やして家を
片づけたというのに!…とは私の心の声。
宇宙船は、お嬢様学校に通う女子高生の
ような話し方をする。
そして、ちょっぴりツンデレ風。
ワガママで腹が立つけど、どこか憎めない。
ワタシは宇宙船を窓の方へ向け、台の
上に鎮座させた。
『向こうに見える山が三森山ですよ。
晴れた日はキレイですね~!』
なぜか、置き物のご機嫌をとるワタシ。
1日、窓の外を眺めて過ごしてもらった。
翌日、宇宙船に話しかけてみる。
『来週、宇宙のお話会を開くのだけど、
あなた、いろんな人に会ってみたい?』
『そうね~。正直、人はどうでもいい
わ。私は美しい景色が見たいの。』
どうでもいいのかよ!
ワタシは心の中で毒づく。
そして思う。シリウス星人ボンビー
は人が大好きだから、違うのだな…と。
宇宙船、見た目も美しいし、なんか
かわいいけど、ワタシの手には負え
ない気がしてきた。
ヨシ!ボンビーにこの子を託そう!
言ってみれば、丸投げである…。
『宇宙船さん、この子はボンビーだよ。
良かったら色々話してみてね。』
そう言って、ワタシはその場をあとに
した。
ボンビーは言う。
『景色が見てみたいの?でも。君は
割れ物なんだ。無理を言っちゃいけ
ないよ。』
『私が割れ物?そんなこと、わたしの
知ったことではないわ!』
『あのね、ボクは綿でできている
から壊れないけど、君は壊れやすい
素材なんだよ。だから、お出掛けは
難しいと思うよ。』
『そんなぁ。わたしはずっとここ
から出られないの?』
ボンビーの説得は続きました。
説得というより、宇宙船をなだめて
くれていました。
けれど、夜には二人が楽しくおしゃ
べりする様子もうかがえて、ワタシ
はホッとしたのでした。
朝になり、ボンビーがワタシに
教えてくれたことは、
『あのね、お母さん。ボク、宇宙船に
幽体離脱を教えようと思うんだ。
それなら、いろんな景色を見に連れて
行けるよね?』
なんて心やさしい決断なのでしょう!
ワタシはボンビーに任せることにしま
した。
こうして並んでいる二人を見ると、
ボンビーが頼もしく見えます!
頼むね、ボンビー先輩(^人^)